安息香酸(あんそくこうさん)は、ベンゼン環にカルボン酸基が結合した有機化合物で、化学式は C₆H₅COOH です。常温では白色の結晶状で、わずかに芳香を持っています。食品や飲料、化粧品、医薬品の保存料として広く利用されています。
安息香酸は天然にも存在し、クランベリーやシナモンなどの植物に含まれる成分ですが、工業的には主にトルエンの酸化によって製造されます。
安息香酸の主な用途
1. 食品保存料としての安息香酸
安息香酸やその塩(安息香酸ナトリウム)は、カビや細菌の繁殖を抑える働きがあります。酸性条件で効果を発揮するため、以下のような酸性食品や飲料でよく使われます。
- 炭酸飲料
- 果汁飲料
- 酢漬け食品
- 醤油・ソース類
2. 化粧品や医薬品での使用
- 化粧水やクリームの防腐剤
- うがい薬やシロップ剤の保存安定化
- 一部の外用薬での抗菌目的
安息香酸の安全性について
食品添加物としての基準
日本では食品衛生法により、使用できる食品や最大使用量が定められています。
例えば、安息香酸として 0.6g/kg以下 など、製品ごとに上限が決まっています。
ビタミンCとの反応に注意
安息香酸は高温や光の下で、ビタミンC(アスコルビン酸)と反応するとベンゼンが生成する可能性があります。ベンゼンは発がん性物質のため、製造時には反応を防ぐ工夫が行われています。
安息香酸の天然由来と合成の違い
- 天然由来:ベリー類や発酵食品に自然に含まれる
- 合成品:石油由来の化学合成による製造
化学構造や保存効果は同じですが、オーガニック志向の製品では天然由来をアピールすることがあります。
安息香酸を避けたい場合の代替品
保存料を避けたい場合は、以下のような代替成分や方法があります。
- ソルビン酸カリウム
- ナイシン(天然由来抗菌ペプチド)
- 冷蔵保存や真空パックなど物理的保存方法
まとめ
安息香酸は長年使われてきた保存料で、食品・化粧品・医薬品の品質保持に役立っています。使用量は厳しく規制されており、通常の摂取では健康リスクは極めて低いとされています。ただし、過剰摂取やビタミンCとの反応条件には注意が必要です。
添加物の知識を持つことで、より安心して商品を選ぶことができます。